皆さん、こんにちは。
司法書士法人ももたろう総合事務所の澤田です。
最近、相続放棄のご依頼が増えていますので、
本日は、以下のとおり、解決事例や手続きのポイントについてご紹介いたします。
A.解決事例 ~固定資産税の通知から始まった、疎遠な伯父の相続放棄~
・相談者
相談者はAさん、55歳の男性です。仕事を持ちながら日々忙しく過ごしており、伯父とは疎遠な関係でした。
・相談内容
ある日、Aさんのもとに市役所から突然「固定資産税を納めてほしい」という通知書が届きました。
内容を確認すると、約1年前に亡くなった伯父名義の不動産に関する固定資産税であることが分かりました。
伯父は独身で子どももおらず、Aさんを含む兄弟姉妹が相続人に該当する可能性があるとのことでした。
しかし、伯父の不動産は立地や状態からみて売却も難しそうで、維持管理や税金の負担を引き継ぐことに強い不安を感じ、相続放棄をしたいというご希望でした。
Aさんは書籍やインターネットを使って相続放棄の方法を調べ、自分でも手続きを進めようとしましたが、戸籍の取得や書類の準備が思うように進まず、途中で行き詰まってしまいました。
そこで、相続放棄の手続きを一任したいとのことでご相談に来られました。
・相談の背景
Aさんは裁判所のホームページなどを参考にしながら、必要な戸籍を市役所で取得しようとしましたが、伯父との続柄が分かる戸籍については、個人情報保護の観点から取得できませんでした。
また、相続放棄には「3か月の期限がある」と知り、伯父が亡くなってから約1年が経過していることに大きな不安を感じていました。
さらに、Aさんは平日は仕事があり、役所や裁判所へ何度も足を運ぶことが難しい状況でした。
他の兄弟も同様に相続放棄を希望していたため、「まとめて確実に手続きを終わらせたい」という思いが強くなり、専門家への相談を決断されました。
・相続手続きの設計
・提案内容
まず、司法書士が職務上請求を用いて、伯父の出生から死亡までの戸籍一式を取得しました。
伯父は生前に転籍を繰り返していたため、複数の自治体にまたがる戸籍収集が必要となりました。
また、相談者との関係性を明らかにするため、Aさん自身の戸籍や、すでに亡くなっているAさんの父の戸籍も取得しました。
相続関係が明確になった後、家庭裁判所に提出する相続放棄申述書を作成し、Aさんに署名押印をしていただいた上で、管轄の家庭裁判所へ提出しました。
その後、裁判所から送付される照会書(回答書)についても、記載内容の確認や作成支援を行いました。
相続放棄が正式に受理された後は、市役所に対して相続放棄を行った旨の通知を行い、固定資産税の請求がAさんに及ばないよう手続きを整えました。
・相続の目的
今回の目的は、不動産など一切を相続せず、Aさんや他の兄弟が将来にわたって不利益を被らないよう、適切に相続放棄を完了させることでした。
そのため、期限や書類不備によるリスクを回避し、確実な手続きを行う必要がありました。
・相続財産
相続の対象となったのは、伯父名義の不動産のみで、固定資産税の負担が問題となっていました。
・当事者:AさんおよびAさんの兄弟姉妹(第三順位相続人)
・相続手続きを行うメリット
・具体的な効果
戸籍を調査した結果、伯父は転籍を何度も行っており、手続きに必要な戸籍は10通近くに及びました。
これらを相談者自身で集めるのは現実的に非常に困難だったといえます。
また、相続放棄の期限についても、「自己のために相続の開始があったことを知った時」から起算されるため、今回のケースでは市役所から通知書が届いた時点が起算点となり、期限内であることを裁判所にきちんと説明する必要がありました。
専門家が関与することで、Aさんは書類内容の確認と署名押印のみで済み、それ以外の煩雑な手続きや裁判所とのやり取りから解放されました。
・メリットの整理
相続放棄は自力で行うことも可能ですが、第三順位相続人となる兄弟姉妹の場合、戸籍収集の段階でつまずくケースが少なくありません。
専門家に依頼することで、
・戸籍収集の負担軽減
・期限管理の不安解消
・書類不備による補正リスクの回避
といったメリットが得られます。
・手続きの流れ
戸籍調査による被相続人と相談者の関係性の特定を行い、相続放棄申述書を作成・提出しました。
その後、裁判所からの照会書への回答支援を行い、相続放棄が受理された後、市役所へ相続放棄の通知を行いました。
・まとめ
本事例は、疎遠だった伯父の死亡後、突然届いた固定資産税の通知をきっかけに相続放棄を検討し、専門家のサポートによって無事に手続きを完了したケースです。
相続放棄の期限や戸籍取得の壁といった不安要素が多い中で、適切な手続きを踏むことで、相談者の将来的な負担を確実に回避することができました。
相続放棄は「期限がある」「書類が難しい」といった理由から、少しでも判断が遅れると大きなリスクにつながります。
特に兄弟姉妹が相続人となるケースでは、戸籍の取得だけでも大きな負担となりがちです。
もし突然、固定資産税や管理の通知が届いた場合には、自己判断で動く前に、相続の専門家へ相談することをおすすめします。
専門家に任せることで、精神的な負担を軽減し、確実な相続放棄につなげることができます。
B.相続放棄の手続きのポイント
⑴相続放棄の発生経緯
近年、疎遠な兄弟姉妹(第三順位相続人)による相続放棄が目立ちます。
典型例として、亡くなった方(被相続人といいます)の死亡後しばらくしてから、市役所から「固定資産税の納税義務者」としての登録通知が突然届き、不動産について納税を行うのか、相続放棄するのかの対応決定を迫られるケースです。
とりわけ被相続人との交流が乏しかった相続人は、相続開始を知る機会が遅れがちで、こうした行政通知をきっかけに初めて相続人である事実を知り、慌ただしく選択と手続きに直面する状況が生じています。
⑵「相続放棄」の法的定義と一般認識との相違
ここで言う「相続放棄」は、家庭裁判所に対して申述する正式な手続きであり、亡くなった方の資産のみならず、借金などの債務・義務を含めた一切の相続を受けないことを法的に確定させるものです。
一方、世間でしばしば用いられる「放棄」という語は、相続人全員による遺産分割協議の場で、財産を受け取らない合意を指すことが多いです。
いわゆる「財産放棄」といえます。
しかし、この一般的な「財産放棄」では、債務・義務の負担を免れることはできません。
両者は手続の場も効果も本質的に異なるため、誤解のないように区別が必要です。
⑶手続きにおける重要規則と税務上の注意点
相続放棄には厳格な期限があります。
起算点は「自己のために相続の開始があったことを知った時」から3ヶ月(民法915条)であり、「亡くなってから3ヶ月」ではない点に注意が必要です。
この3ヶ月の間に家庭裁判所へ相続放棄の申述を行い、受理されることで、法律上は相続開始時に遡って相続人ではなかった扱いとなります。
一方で、固定資産税に関しては重要な実務上の注意点があります。
市役所が固定資産税の台帳に相続人を「納税義務者」として登録した後に相続放棄を行った場合、相続放棄により身分上の相続人ではなくなる効果が生じても、当該年度の固定資産税については税法上の納税義務が残る可能性があります。
つまり、相続放棄は民事上の地位を解消しますが、既に確定・登録された当年度課税に対する負担までは自動的に消えない場合があるため、通知受領後の対応は迅速かつ慎重に行う必要があります。
⑷兄弟姉妹の相続放棄における手続き上の障害
兄弟姉妹が相続人となる場合、被相続人との続柄を家庭裁判所に明確に立証するため、多数の戸籍謄本(本籍の変遷や婚姻・養子縁組の有無を遡る資料)が必要となります。
ところが、個人でこれら戸籍を収集しようとすると、個人情報保護の観点から市役所窓口で取得に制限や確認が入りやすく、最初の障害となりがちです。
この点、司法書士等の専門家は「職務上請求」を用いることで、必要な戸籍類を円滑に取り寄せられるため、収集の難易度と時間的負担を大きく軽減できます。
また、複数の相続人が同時に相続放棄手続きを進める場合、共通で用いる戸籍などの資料を効率的に流用できるため、事務処理の重複を防ぐことが可能です。
加えて、事務所によっては「まとめて依頼」に対する費用面の割引が適用されることもあります。
C.相続放棄の概要と手続きの流れなど
・定義と期限
相続放棄とは、自身が相続人であることを知った時から3ヶ月以内に、亡くなった方(被相続人)の最後の住所地を管轄する家庭裁判所で行う手続きです。
この3ヶ月という期間は「熟慮期間」と呼ばれます。
・必要書類
必要書類は亡くなった方と手続きをする方(申述人)の関係性によって異なります。
最低限必要な書類として、亡くなった方の戸籍と除票、そして申述人自身の戸籍が挙げられます。
・3ヶ月超過時の例外措置
原則として3ヶ月の期限を過ぎると手続きはできませんが、例外的に認められるケースも存在します。
この場合、家庭裁判所に対して上申書、事情説明書、その他参考資料を添付して、期間超過の正当な理由を説明する必要があります。
・相続放棄の手続きの流れ
⑴申述までの流れ(3ヶ月以内)
– 1. 検討: 相続放棄をするか否かを決定する。
– 2. 書類収集: 戸籍謄本など必要書類を集める。
– 3. 申述書作成: 相続放棄の申述書を作成する。
– 4. 提出: 作成した申述書と書類一式を管轄の家庭裁判所に提出する。
以上を熟慮期間内に行います。
⑵申述後の流れ
– 1. 裁判所からの照会: 申述が受理され審理が進むと、家庭裁判所から申述内容確認のための回答書(照会書)が送付される。
– 2. 回答書の返送: 必要事項を記入・押印し、家庭裁判所に返送する。
– 3. 受理通知書の受領: 問題がなければ、相続放棄成立を証明する「受理通知書」が送付される。
– 4.債権者への通知:家庭裁判所は、相続放棄成立を債権者(例:市役所、金融機関など)へ通知しません。
そのため、申述人が関係債権者に対し、「受理通知書」のコピーや「受理証明書」を送付して相続放棄を通知する必要があります。
